今年も夏が過ぎる

僕の中にある水。

水の話、どこかで読んだ。

水の風景はいつも形を変えたが、風の匂いは同じだった。

風はいろいろなものを揺らして去っていった。

風は止まない。穴に向かって、吹き抜け続けている。

風は僕の部屋のカーテンも揺らした。

カーテンの向こうには白さの壁があった。

今年の蝉の鳴き声は白さの壁のように、そびえ立っていた。

白さの壁はいつも、すぐそこでそびえ立っていて、しかしそれを越えることはできなかった。

カーテンが揺れて、影の形が変わるだけだった。

白さの壁の向こうでは、ボーイミーツガールのほか、毎日がぐるぐると泳ぎ続けてるのがわかるけど、僕は何もしなかった…。

 

いつも、坂道の向こうには何か…と思っていた。

坂道の向こうにはきっと水がひろがっていた。

僕は飛び込みたかった。鼻を塞ぎ、深く息を吸い、一息に飛び込みたかった。

 

あのときの坂道の先には何があったのでしょうか…。

夏…。